アクセサリー・石言葉やパワーストーンの起源や歴史と医学的効果や意味、ヒーリングの考え方について

宝石・ジュエリー・鉱物の基礎知識
photo by Arpingstone

アクセサリー・石言葉やパワーストーンの起源や歴史と医学的効果や意味、ヒーリングの考え方について

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ジュエリー・アクセサリーの起源と歴史

石と人間に関わりは深く、人類の誕生とともにあったと言っても過言ではありません。

黒曜石などの石器としての利用からはじまりましたが、徐々に装身具として利用されはじめます。装身具として身につけるのには理由があり、さまざまな意味付けがされていました。

旧石器時代にはすでに動物の骨や牙、石などで装飾品が作られていますし、日本で縄文時代前期(紀元前5000年前~3500年前)には最も古い翡翠の加工が始まっています。縄文時代の遺跡からは貝、石、粘土などの素材で作られた腕輪、耳飾りがみつかっています。

弥生時代には金属や動物のもの、古墳時代にはガラス、水晶、瑪瑙なども使われています。

ですが、奈良時代以降日本ではアクセサリーの文化が失われ、明治時代までほとんど見向きもされませんでした。

ジュエリーやアクセサリーを身につけるいくつかの理由

  1. 国や村、集落の集団の一員であるという証、あるいはその集団で力を持っている者の証
  2. 身分や職業を表すものとしての意味
  3. 獲った獲物を誇る意味
  4. 身を護ってくれる護符として、あるいはその素材のもつ力が授けられると信じる気持ち
  5. きれいなものを飾ることで自分をよく見せること
  6. (死者に対して)弔いの気持ち、死後の世界での無事と繁栄を祈る気持ち

はるか昔から人間はこれらの理由から装飾品を身にまとってきました。

 

護符とは

幸運を招く
福を招く
災厄・病気を免れる
悪魔を寄せ付けない

などの効果をもつもののこと。
その意味では非常に広くさまざまな種類があり、アミュレット(護符:主に魔除け)、タリスマン(呪符)、チャーム(幸運の飾りやシンボル・ラッキーチャーム・四葉のクローバー等)、お守り(神道・仏教)、霊符(道教)、魔法陣、踊りや儀式、千羽鶴などがあります。
素材も、動植物の形をしたものや骨や牙や爪、神を象ったものやそのシンボルを象ったもの、祈りを込めた札、宝石など、世界の各地に多数の種類があります。
古来より安全に心安らかに生活を送るため、あるいは生まれてくる、死にゆく生命に対しての祈りや願いを込めて、信じられ使われてきた歴史があるのです。

古い文明の中で使われてきた宝石、パワーストーン

石言葉やパワーストーンが認知されるはるか以前、古代エジプトや古代ギリシャやメソポタミア、アンデス、メソアメリカなどの古い文明において、石はその力を信じられ、神のシンボルとして護符とされたり治療に使われていたりしました。

宝石としての石だけではなく、巨石文化としてストーンヘンジ、カルナック神殿なども同様に石の力を利用したと考えられています。

黄金とアクセサリーの起源

アクセサリー、例えば、髪飾り、ネックレス、リング、イヤリング、ブレスレットは古代エジプト(紀元前3000年頃から)ですでに登場しており、金細工の技術もあり、スカラベやコブラ、猛禽類などを象ったジュエリーが作られていました。エジプトでは金が多く産出したこともあり宝石と金はすぐにともに使われることになったと考えられます。

宝石は主にターコイズ(トルコ石)、ラピスラズリ(瑠璃)、カーネリアン(紅玉髄)が使用されていました。

また王は現人神として神と崇められたりしたこともあり、死後の世界との関わりもあることで、はじめからアクセサリーの装飾と宗教との関わりは深いものでした。

パワーストーンと医学との関わり

例えば、アメジストは古代ギリシャでは酩酊予防効果が信じられていたり(アメジストの語源はギリシャ語のamethustos酔っていない)、翡翠(ジェード)は腰の病気の治癒効果があると信じられ(ジェードの由来はスペイン語「piedra de ijada」 腰・腎臓・肝臓・腹の石)ていたり、ルビーも血液の浄化、止血、出産のお守りとされていたり万病の薬とされていたことからもわかるように、古来より石は医療に深いかかわりを持っていました。
下記に引用するとおり、11世紀においても石は医療に実際に使用されていたことがわかります。

De Lapidibus(11世紀末フランスの司教マルボドゥス著の”石について”をさす)は医術的なガイドとして書かれたというが、今日の読者が読むと、超自然的で、魔術的とも言える記述も多く見受けられる。これはどうしたことであろうか。ここで、私たちは、当時の医術に対する理解を深めなくてはならないだろう。当時、宝石、鉱物を医術に利用することはよく行われた。12世紀に、Philippe de Thaonという詩人が、自らのLapidaryに次のように書いている、「医術で石を用いる方法は4つある、石に触ること、身につけること、飲み物として摂取すること、見つめることである」と。「お守り」として、石を身につけることも、見つめることだけでも医術的行為なのである。

石について: 石に宿る神秘な力 Kindle版 マルボドゥス (著),‎ 髙橋邦彦 (翻訳) より引用

現在でも石を使ったヒーリングはよく行われていて、石と使ったマッサージ、中国のかっさ、岩盤浴など、その利用は多岐にわたっています。

 

パワーストーンと宗教・錬金術・オカルト等との関わり

ほかの宗教との関わりも深く、紫水晶(アメシスト)はキリストの血と関連付けられており、聖書には石や宝石に関する記述の場所が2000箇所もあると言われています。

誕生石のもととなったエピソードでは、旧約聖書(出エジプト記の第28章及び第39章)で聖職者の胸当てに12の宝石が埋め込まれていた記述があります。

また瑠璃(ラピスラズリ)は仏教で七宝のひとつで、「薬師瑠璃光如来」と呼ばれる仏像があるほど密接に結びついています。

石というものに関して言えば、中世ヨーロッパで盛んに行われた錬金術においては「賢者の石」が特に重要であり、鉛を金に変えたり永遠の命を授ける石とされました。

魔呪の石(Magic stone)

ある種の石(貴石、半貴石、その他)は、オカルティストによって、彼らが魔除けとして、あるいは病気予防として利用できる特殊の属性をもつと見なされていた。オカルト文献には、そのような石やそれによる想像上の美徳がつぎつぎと繰り込まれている。例えば、アマンディヌスと呼ばれる石をもっている者は、夢や謎に関するどんな質問でも解くことができる。黒い石のアンティファテスは、魔法使いや邪眼に対して特殊効力がある。紅海の砂から取れるアンドロマヌスは、怒りや狂気に対して効力があると信じられた。アナキティドゥスは、巫術の石で、悪霊を呼ぶ力などを持っていた。石につけられた呼称はしばしば、錬金術上の価値に関する宇宙的特性や原理を隠すものであった―――
オカルトの辞典より

 

つまりそれほど、歴史的にある種の石は力を持っており、いわゆる現在で言うところのパワーストーンとして扱われてきたと言えるでしょう。(ちなみに、パワーストーンとは和製英語であり、英語ではジェムストーン Gemstones と呼ばれます。)

現代のパワーストーンや石言葉のはじまり

日本においてパワーストーンが認知されはじめたのは1990年から2000年にかけてだと思われますが、いままで高価で手の届かないものであった宝石や美しい石が広い層に利用されやすくなったことがあげられるでしょう。美しくカットされ貴金属にセットされる宝石だけではなく、より身近なアクセサリー、例えばピアスやペンダント、チョーカー、アンクレットなどに使われ、単なる美しさを感じるだけではなく身につける人がその石から元気や癒しを受けているということは特筆すべきことでしょう。

現在さまざまなパワーストーンや石言葉についての書籍が出版されています。

そのパワーストーンの効果や役割、宝石や貴石についてのイメージである石言葉についてもその起源となるものは、以下の書籍が元になっていると言われています。

それらの書籍をご紹介しておきましょう。

パワーストーンの意味付けの元となる書籍

このように古来から、様々な石は様々な意味付けをされてきました。

そしてその意味付けや実際にどのように使われてきたか、また現在使われているのかを調査しまとめる作業が行われました。下記に紹介する書籍はその過程で編纂されてきたものです。

そうでない場合もあるため一概に言うことはできませんが、パワーストーンの意味付けにはこれらの書籍から影響を受けていると考えられます。

77年 プリニウス 博物誌

ガイウス・プリニウス・セクンドゥス 古代ローマの博物学者、政治家、軍人

自然界を網羅した博物誌を記す。

鉱物にかぎらず、天文学、地理学、動物、植物、等多岐にわたる

このうちの第37巻において宝石が紹介されている

博物誌 - Wikipedia

4世紀 ダミゲロン 石について

魔術師ダミゲロンの記述した「鉱石誌」

Damigeron, De lapidibus

404 Not Found

 

4世紀後半 オルフェウス リティカ(オルフェウスの鉱石讃歌)

ギリシャ神話に登場する吟遊詩人。《リティカ》(宝石の不思議な効力を叙事詩形で語ったもの。成立年代不明)を記す

国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online
国立国会図書館検索・申込オンラインサービス(略称:国立国会図書館オンライン)は、国立国会図書館の所蔵資料及び国立国会図書館で利用可能なデジタルコンテンツを検索し、各種の申込みができるサービスです。
《リティカ》(りてぃか)とは? 意味や使い方 - コトバンク
世界大百科事典 第2版 - 《リティカ》の用語解説 - 神話的人物とはいえ,オルフェウスという個人を創始者と仰ぎ,個人の魂の救済を目的とし,聖典ともいうべき文書を備えていた点において,宗教が国家的集団的で教典の類を欠いていた古代ギリシアでは特異なものであった。オルフェウスの名の下...

 

1081年 マルボドゥス 石について

11世紀末にフランス・レンヌの司教だったマルボドゥスが記した石についての記したもの

薬学的効果を述べているのも特徴とされる

マルボドゥス「石について」の解説とラテン詩全訳--11世紀末のキリスト教世界に登場した鉱石薬剤書の紹介 (明治薬科大学): 1990|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

1913年 宝石と鉱物の文化誌(The Curious Lore of Precious Stones)  ジョージ・フレデリック・クンツ

鉱石・宝石学者であり、ティファニーの副社長であったジョージ・フレデリック・クンツ(クンツァイトの名前の由来となった人物)が世界の宝石にまつわる逸話などを収集した書籍

George Frederick Kunz - Wikipedia

 

1901年 誕生石:宝石にまつわる感情と迷信(Natal Stones: Sentiments and Superstitions Associated with Precious Stones)  ジョージ・フレデリック・クンツ

上記の書籍と同じく、ジョージ・フレデリック・クンツが誕生石について解説した短い小冊子(ティファニーが出版)

こちらはインターネットアーカイブのサイトで全文を見ることができます。

Natal Stones: Sentiments and Superstitions Associated with Precious Stones : George Frederick Kunz : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
Book digitized by Google from the library of the University of Michigan and uploaded to the Internet Archive by user tpb.

誕生石:宝石にまつわる感情と迷信

この書籍の中で石の象徴する言葉・意味が紹介されているページがあります。

訳して紹介します。

 

感情と石の関係:石が表す意味

アゲート…..健康、富と長寿。
アレキサンドライト…..失うことのない信心。
アメジスト…..深い愛。酩酊を予防する。
ベリル…..幸福と永遠なる若さ。
ブラッドストーン …..勇気と知恵。
カーネリアン…..不幸を防ぐ。
キャッツアイ…..危険とトラブルの警告。
カルセドニー……憂鬱を霧散させる。
クリソライト …..心を喜ばせる。
クリソプレーズ…..雄弁さ。
ダイヤモンド…..純潔。安らぎを保ち、嵐を防ぐ。
エメラルド…..不滅。罪と試練を克服する。
ガーネット…..確かな力、着ける者に栄光と勝利を。
ジルコン…..千里眼、透視力を与える。
ジャシンス …..謙虚さ。
ジェイド…..素晴らしい幸運。
ジャスパー…..勇気と知恵。
ムーンストーン…..(東洋の神聖な石)幸運。
オニキス…..夫婦の幸福。
オパール…..希望、無垢(純真)、純潔。
パール…..純潔と無垢(純真)。
ルビー……慈悲、尊厳と神の力。
サファイア…..不変、真実と美徳。
サードニクス ….. 夫婦の幸福。不運を防ぐ。
トパーズ…..友情と信義。
ターコイズ….. 繁栄。魂を励ますもの。

 

原文
Natal Stones: Sentiments and Superstitions Associated with Precious Stones
SENTIMENTS ASSOCIATED WITH STONES

Agate…..Health, Wealth and Longevity.
Alexandrite…..Undying Devotion.
Amethyst…..Deep Love. Prevents Intoxication.
Beryl…..Happiness and Everlasting Youth.
Bloodstone…..Courage and Wisdom.
Carnelian…..Prevents Misfortune.
Cat’s-eye…..Warns of Danger and Troubles.
Chalcedony…..Disperses Melancholy.
Chrysolite…..Gladdens the Heart.
Chrysoprase…..Eloquence.
Diamond…..Purity. Preserves Peace. Prevents Storms.
Emerald…..Immortality. Conquers Sin and Trial.
Garnet…..Insures Power, Grace and Victory to the Wearer.
Hyacinth…..Gives Second Sight.
Jacinth…..Modesty.
Jade…..Good Fortune.
Jasper…..Courage and Wisdom.
Moonstone…..(Sacred Stone of the Orient.) Good Luck.
Onyx…..Conjugal Felicity.
Opal…..Hope, Innocence, Purity.
Pearl…..Purity and Innocence.
Ruby…..Charity, Dignity and Divine Power.
Sapphire…..Constancy, Truth and Virtue.
Sardonyx…..Conjugal Felicity. Prevents Misfortune.
Topaz…..Friendship and Fidelity.
Turquoise…..Prosperty. Soul-cheerer.

 

備考:宝石の効力について書を残している人物たち

●アルベルトゥス・マグヌス(1193年頃 – 1280年11月15日 13世紀のドイツのキリスト教神学者)

魔術書「大アルベルトゥスの秘法」には動物や植物のもつ魔力と並び宝石の効力も書かれている。
アルベルトゥス・マグヌス ウィキペディア

●ルドルフ2世の侍医アンセルム・ボエティウス・デ・ボート

「宝石及び鉱石史」宝石を善性と邪性、長所や力で分類

●ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098年 – 1179年9月17日 中世ドイツのベネディクト会系女子修道院長であり神秘家、作曲家。ドイツ薬草学の祖)

自然学(邦題 聖ヒルデガルトの医学と自然学)という著書に石と宝石を扱う章があり、宝石のもつさまざまな効能が書かれてある
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン ウィキペディア

●ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ(1538年 – 1615年2月4日 ルネサンス期のイタリア、ナポリの博学者、医師)
ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ ウィキペディア